壺齋散人の 美術批評
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サーカス:スーラの点描画





サーカスを描いたこの絵は、スーラの最後の作品となった。この絵を未完成のままで1891年のアンデパンダン展に出品している最中に、スーラは死んだのである。未完成のまま出品したことには、スーラなりに死の予感が働いていたのだろうか。

この絵が描いたのは、フェルナンド座のサーカス。スーラのアトリエのすぐ近くにあった。そこでスーラは、彼としては珍しく、人間の激しい動きをモチーフに選んだ。スーラの絵は、人間を伴なわないものが多く、人間が描かれても、みな静止した姿で描かれていた。ところがこの絵の中の人間は、どれもみな動きを感じさせる。

中央には馬の背に乗って曲芸を披露する女と、とんぼ返りをする男が描かれ、その馬の調教師が鞭を振り上げて馬を制御している。手前には赤い頭巾をかぶった道化が、幕に手をかけている。いずれの人物も動きを感じさせる。

背後には多くの観客が描かれているが、下段のほうには裕福なブルジョワ、最上段には労働者を配し、その中間に様々な階層の人物を描いている。スーラの目は、そうした多彩な背景をもった人々の相違を見逃さないかのようだ。(1891年 カンバスに油彩 185.5×152.5㎝ パリ、オルセー美術館)



これは、油彩でカンバスに描かれた習作。青、赤、黄の三原色だけを用いて描かれている。(1891年 カンバスに油彩 55.5×46.5㎝ パリ、オルセー美術館)




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