壺齋散人の 美術批評
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ホボーケンの縁日:ブリューゲルの版画




ブリューゲルは生涯を通じて版画のための下絵を描き続けたが、後半生は油絵の制作が主体になった。その転換期ともいえる時期は、1559年と考えられる。その年ブリューゲルは「ネーデルラントの諺」、「謝肉祭と四旬節の争い」を描いているが、この二つは民衆の生活と、彼らの精神世界の風景を描いている点で、今日我々がブリューゲル的といっているところの特徴をいかんなく発揮したものだ。

ホボーケンの縁日と題したこの版画下絵も、1559年に制作している。ホボーケンとはアントワープの南にある小さな町で、そこで定期的に開かれた縁日には、当時の民衆の生活と関連したさまざまな催しがなされた。その催しの内容を読み解けば、当時の民衆の生活がおぼろげながらわかってくるはずだ。

縁日は街の広場を舞台に広げられている。広場の背景には教会が立ち、その背後には森が連なっている。広場に面して一軒の酒場があり、その手前にのぼりが立てられている。のぼりには、ギルドのマークが描きこまれている。交差した屋の模様から、このギルドが弓術のギルドだとわかる。実際に、のぼりの下では人々が弓の練習をしているのだ。





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