壺齋散人の 美術批評 |
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子どもの遊び:ブリューゲルの世界 |
「子どもの遊び」と題するこの作品の中で、ブリューゲルは実に250人以上の子どもたちを描いている。彼らの多くは大人のお下がりのようなだぶだぶの服を着て、あらゆる種類の遊戯に熱中している。 遊戯の詳細をひとつずつ追っていくと、中世からルネサンスにかけてのヨーロッパで、子どもたちがどんな遊びをしていたかがわかる。そのほとんどは、簡単な道具のほかには身体を用いたあそびである。 純粋な身体遊戯としては、とび馬(中央)、騎馬戦(そのすぐ左)、目隠し鬼(更に左)、刑罰あそび(目隠し鬼のすぐ上)、馬乗り(右下)、揺らしっこ(その上)などであり、簡単な道具を使った遊びとしては、輪っかころがし(中央下)、樽のり(その上)、コマ回し(右手中央)などがある。 子どもらの表情を子細に眺めてみると、そこにはいわゆる子供らしさがないことに気づく。着ているものも表情も、今日考えられる子供らしさとは無縁だ。どの子どもも、大人のような顔つきをしているといってよい。 アリエスがいうように、この時代には子供らしさというものが人々に意識されることはなかった。子供というのは特別な存在ではなく、人間がこの世に生まれて一人前の大人になる前の過渡的な段階の生き物だった。いわばできそこないの大人だったのである。 (1560年作、板に油彩、118×161cm、ウィーン) |
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