壺齋散人の 美術批評
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バベルの塔1:ブリューゲルの世界




バベルの塔をテーマにした絵をブリューゲルは3枚描き、そのうちの2枚が現存する。一枚はここで取り上げるウィーンにある作品、ほかの一枚はロッテルダムにある一回り小さな作品だ。

ブリューゲルはイタリア滞在中に見たローマのコロシアムをはじめとする古代の建築物のイメージをもとにこれらの絵を描いたと思われる。その古代建築物の背景として描かれている街は、ブリューゲルが生きた時代のフランドルの町の光景だったと思われる。

塔の外回りは螺旋状の坂になっており、そこを利用して機材を運んだり、作業員が移動したりする光景が展開される。坂の途中にはところどころクレーンが設置され、石を引き上げたりするのに使われている。クレーンの大きさや人間の大きさと比較してこの塔がいかに大きいか、視覚に直接訴える迫力がある。

バベルの塔は人間の高慢の象徴だとされる。左手下に描かれているニムロソ王は、バベルの塔の建設者であるが、彼は自分の高慢な野望を満足させるためにこの塔を建てたといわれる。

(1563年、板に油彩、114×155cm、ウィーン美術館)





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