壺齋散人の 美術批評
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牛群の帰り:ブリューゲルの世界




ブリューゲルの「月歴画連作」の最後の作品ともいえる「牛群の帰り」は、11月を描いている。11月は秋から冬への移行期で、丘で放牧していた牛たちを麓の小屋に移す季節だ。この絵はその移動の様子を描いたものだ。

牛追いたちが長い竿を使って牛を追い立てている。追い立てられた牛は列をなして、麓の村の方に向かって歩いていく。村の背後には厳しい自然が連なっていて、これからやってくる厳しい冬を暗示させている。

牛追いたちの背後から馬に乗ってやってくるのは、牧場の主人だろうか。そのあとからは使用人らしき男たちが三人従っているが、主人の表情はそんなに偉そうには見えない。

牛も、牛追いたちも、それらの主人も、みな風景の一部分として、背景の中に溶け込んでいるように見える。

(1565年、板に油彩、117×159cm、ウィーン美術館)





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