壺齋散人の 美術批評
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ヴィーナスとキューピッド:クラナッハの官能美




クラナッハが、あの独特の官能的女性裸体画を、どのような動機から描くようになったのか、くわしいことは分からない。注文を受けて描いたこともあるらしい一方、自分にとっての純粋な楽しみとして描いたと思われるようなところもある。1530年代以降になると、こうした裸体像は、同じようなテーマで多く描かれており、その大部分には工房の弟子たちの手も加わっているようである。

こうした裸体画の最初のものとされるのが、1509年の「ヴィーナスとキューピッド」である。この絵の中のヴィーナスは豊満な体つきをしており、その点で後期の裸体画とはかなり違った印象を与えるが、プロポーションに誇張があり、手足がやけに長いことは後期の裸体画を連想させる。

ヴィーナスとキューピッドは、いうまでもなく、ギリシャ・ローマ神話からとった題材である。神話では、キューピッドは盲目と云うことになっているが、この絵の中のキューピッドは、ぱっちりと目を見開き、標的を狙っている風情である。

(1509年、カンヴァスに油彩、213×102cm、ペテルブルグ、エルミタージュ美術館)





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