壺齋散人の 美術批評 |
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ルター夫妻:クラナッハの肖像画 |
マルチン・ルターが、修道院を出奔した尼僧カタリーナ・フォン・ボラと結婚したのは、1525年のことだった。その頃のルターは、すでに宗教改革者として有名だったので、この結婚はビッグ・スキャンダルになりそうだった。そこで、ルターは、この結婚を秘密裏に進めることにした。そこで、ルターから頼りにされたのが、またまたクラナッハだったのである。クラナッハはルターのために仲介人を買って出て、結婚立会人をつとめてやった。結婚披露宴は、ごく親しい友人だけを集めて、しめやかに行われた。 クラナッハは、この夫妻の肖像画を、結婚の年の1525年に描いたのを手始めに、何点か描いた。そのなかでも有名なのは、1529年に描いたものである。これらの絵を公開することで、ルターは自分たちの結婚に対する世間の受け入れを狙ったのだといわれる。 夫婦の肖像が一つの画面にではなく、別々の画面に描かれているのは、当時の肖像画の伝統にしたがったのだと言われる。(ザクセン公夫妻の場合もそうだった) 二人がそれぞれ、思い思いの方向を向いていることから、別個の機会にスケッチされたものをもとに描いたのだろうと推測されている。 (1529年、板に油彩、それぞれ38×24cm、フィレンツェ、ウフィチ美術館) |
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