壺齋散人の 美術批評
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ウェヌスに訴えかけるキューピッド




ウェヌスとキューピッドは、クラナッハの数ある裸体画の中でも、もっとも早期に取り掛かったテーマだ。1509年に初めてこのテーマを描いて以来、折に触れて描いている。最初の作品では、ウェヌスは豊満な肉体で描かれているが、1525年のこの作品では、ウェヌスは非常に細身になっている。女性が細身で、プロポーションが極端に間延びして描かれているのは、後期のクラナッハの特徴と言える。

キューピッドといえば、弓矢を持っている姿が好んで描かれるが、この絵の中のキューピッドは、蜂の巣を持ち、何匹かの蜂に襲撃されている。蜂の巣を盗もうとして、蜂たちに襲撃されたのである。

キューピッドが蜂の巣を盗もうとして蜂に襲われる話は、ギリシャの詩人テオクリトスの詩に出て来るという。

(1525年、板に油彩、81.3×56.4cm、ロンドン、ナショナル・ギャラリー)







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