壺齋散人の 美術批評 |
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ルクレチア:クラナッハの官能美 |
クラナッハが同一のテーマで最も多く描いたのは「ルクレチア」である。その数は40点に上る。殆どすべては、全身または半身の女性像で、自分の胸元に短刀を突き立てているか、或は突き立てようとする瞬間を描いている。 ルクレチアは紀元前6世紀のローマに実在した女性で、ローマを帝政から民主制に移行させるにあたって功績があった女性だということになっている。 彼女は貞淑な妻であったが、ローマ王の王子セクストゥスに強姦された。云うことを聞かないと、お前を殺したあとに、奴隷と一緒に串刺しにし、姦通の罰を受けたという風にするぞ、と脅かされたからである。そこで彼女は、恥辱に耐えながら王子に体を許したが、王子が去った後、夫や父親を呼び、彼らに復讐してくれるように願った後、自分の胸に短刀を突き刺して死んだのだった。彼女の死後、夫たちは王子に復讐したばかりか、王家そのものを廃絶に追いやった。その結果、ローマには民主制が確立されたというわけである。 (1532年、板にテンペラ、42×37cm、ウィーン、建築美術館) |
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