壺齋散人の 美術批評 |
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ブノワの聖母:レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画 |
「ブノワの聖母」は「カーネーションの聖母」よりやや後に描かれたが、著しい進歩、というかレオナルドらしさが強く見られる作品である。バックを思い切り暗くすることで、モチーフの人物をダイナミックに浮かび上がらせるところは、その最たるものである。幼子の肉体や聖母の着物の襞に見られる陰影も、モチーフをダイナミックに表現する効果を生み出している。 聖母の膝に幼いキリストが座るという構図は、「カーネーション」と同じで、当時のイタリア絵画に共通する定型的な表現だ。この絵の中の幼子は、マリアが手にしている装飾品の細工に戯れている。幼子の視線がその細工に集中しているところは、「カーネーション」の幼子の視線が定まらないのとは大きな相違である。 この作品を描いた頃、レオナルドは他にも数点聖母像の習作を描いたことが考証されている。それらはいずれも、マリアとその膝に乗った幼子をモチーフにしている。この構図には、フランドル絵画の影響が認められる。 この絵はフランスの画家ブノワの所有だったことから「ブノワの聖母」と呼ばれるようになった。その後、ロシア皇帝ニコライ二世の手に渡り、現在はエルミタージュ美術館で保有されている。(板に油彩<現在はキャンバスに移行> 48×31cm エルミタージュ美術館 ) |
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