壺齋散人の 美術批評
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若い男の肖像:レオナルド・ダ・ヴィンチの肖像画




「若い男の肖像」は「白貂を抱く婦人の肖像」と同じ頃にミラノで描かれたと考えられている。この若い男が右手で持っている紙片が楽譜であるところから、音楽家のフランチーノ・ガッフリオではないかと指摘される。

男の顔は、上半身と同じ方向を向いている。そのことから「白貂を抱く婦人の肖像」のような躍動感に乏しい感じを与える。男の表情にも精気が感じられないが、それは構図のおとなしさによるのか、あるいは男自身のもつ雰囲気からくるのか、微妙なところであろう。

この絵は、「白貂を抱く婦人の肖像」よりもいっそう明暗対比がはっきりしている。この時期のダ・ヴィンチの絵の特徴として、明暗対比の強さが指摘されるのだが、この絵はそのもっとも極端なものだと言える。

この絵には、ダ・ヴィンチへの帰属に疑問が投げられることがあるが、今日ではほぼダ・ヴィンチ自身の手になるものとされている。(板に油彩 44.7×32cm ミラノ、アンブロシアナ美術館)





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