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最後の晩餐:レオナルド・ダ・ヴィンチ




「最後の晩餐」は世界の絵画史上最高傑作のひとつに数えられる。ダ・ヴィンチがミラノ滞在中に、スフォルツァ公ルードヴィゴの命を受け、サンタ・マリア・デレ・グラーツェ聖堂の食堂の壁画として、1495年から1497年にかけて製作した。保存に適さないテンペラ画法で描かれたため、早くも16世紀には損傷が現われ、以来何度も修復が繰り返されている。

キリストを中心にして、食卓に十二人の使途を横一列に配した構図をとっている。一点消失遠近法を採用しており、消失点はキリストの右目の奥の部分に設定されている。したがってキリストは、構図上の中心と意味上の中心とを兼ねているわけである。

この絵の意味は、新約聖書にある最期の晩餐にもとづいている。マタイ伝には次のような記述がある。「26:21そして、一同が食事をしているとき言われた、「特にあなたがたに言っておくが、あなたがたのうちのひとりが、わたしを裏切ろうとしている」。 26:22弟子たちは非常に心配して、つぎつぎに「主よ、まさか、わたしではないでしょう」と言い出した。 26:23イエスは答えて言われた、「わたしと一緒に同じ鉢に手を入れている者が、わたしを裏切ろうとしている。 26:24たしかに人の子は、自分について書いてあるとおりに去って行く。しかし、人の子を裏切るその人は、わざわいである。その人は生れなかった方が、彼のためによかったであろう」(口語訳聖書)。ダ・ヴィンチはこの記述を視覚化する形でこの絵の構図を考えたと言われる。

キリストの両側にいる使徒たちは、三人ずつのグループにわけられている。一番左手は、左端からバルトロマイ、小ヤコブ、アンドレアス、いずれも驚愕と怒りの表情を湛えている。その右手は、左手から顔の見える順に、ユダ、ペテロ、ヨハネ。ペテロは怒りの表情でキリストを見つめ、ユダはキリストを売った報酬を右手に持っている。

キリストのすぐ右手には、トマス、大ヤコブ、ピリポ、みな驚きの表情を湛えている。右端は、マタイ、タダウス、シモン、裏切り者が誰なのか、たがいに疑心暗鬼になっている。



これは16世紀に作成された模写。作者は不詳である。色彩が鮮やかなままだ。おそらく原画の古い時代の状態を伝えているものと考えられる。(漆喰壁にテンペラ 460×880cm ミラノ、サンタ・マリア・デレ・グラツィエ聖堂)





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