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洗礼者ヨハネ:レオナルド・ダ・ヴィンチ




レオナルド・ダ・ヴィンチは、60歳を過ぎた晩年に、ジュリアーノ・デ・メディチの庇護を受けてローマに赴いたが、ローマではミケランジェロやラファエロの仕事がもてはやされていて、レオナルドの画家としての活躍の場はほとんどなかった。従って、今日まで残るような大作を製作していない。

そんななかで、晩年の傑作と言えるもののひとつが、「洗礼者ヨハネ」である。これは、レオナルドの真筆かどうかをめぐって異論もあるのだが、今日ではほぼレオナルドの真筆だとする説が定着している。その最大の理由は、この絵が「スフマート」といわれる技法を用いていることである。

スフマート技法というのは、下塗りした絵の具の上に透明のワニスを重ねることで、画面に独特の輝きをもたらす技術である。この技術を晩年のレオナルドが熱心に研究していたことが明らかになっており、この絵もその研究の副産物なのだろうと推測されるのである。

聖ヨハネの上半身が、暗い背景から浮かび上がって見える。単に浮かび上がっているばかりでなく、そこに光が集中して、輝きを以て反射しているように見える。この絵の中のヨハネは光源ではなく、光を反射する役目を果たしているわけだが、その光が神の恩寵を意味するのはいうまでもない。この絵には、宗教的な含意が込められてもいるわけである。(板に油彩 69×57cm ルーヴル美術館)





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