壺齋散人の 美術批評
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デューラー少年時代の自画像




デューラーは8歳にして自画像を描いたが、その作品は失われて伝わっていない。現存するもっとも古い自画像は13歳のときのものである。それでも、少年の描いたものとは思えぬほど、完成度の高い作品であり、デューラーの才能の早熟さを物語っている。(紙に銀筆画、27.5×19.6cm、ウィーン、アルベルティーナ美術館)

紙の右上隅には「これを私は、私がまだ子供であった1484年に、鏡から私自身に即して模写した。アルブレヒト・デューラー」と書かれてある。

斜横をむいた角度で、上半身を手まで描く手法は、当時のネーデルラントの肖像画に多く見られるもので、少年時代のデューラーがすでにネーデルラント絵画の手法を身に着けていたことを伺わせる。

銀筆とは、黒鉛のかわりに銀をつかった鉛筆だと考えてよい。ただ、鉛筆と違ってどんな紙にも描けるというわけではなく、また消しゴムで修正することもできない。したがって、ペン画と同様、一発勝負だ。



この自画像は20歳前後に描かれたものというから、デューラーの遍歴時代の作品である。(紙にペン、20.8×20.4cm、エルランゲン大学図書館)

頭巾をかぶり、頬に左手をあてて正面を向いているその表情には、精神の緊張が込められている。陰影を平行線の重なりによってあらわすのは、デューラーの特徴で、版画の手法に通じるものだ。





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