壺齋散人の 美術批評
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蟹:デューラーの水彩動物画




第一次ヴィネチア旅行中のデューラーの画業として残っているのは、水彩画と素描が殆どだが、なかでも水彩画に優れたものがある。旅の途中に描いた風景画や、ヴェネチアで見かけたカニやエビなど海の生き物のスケッチが印象的である。

この絵は、蟹を至近距離から描いたものだ。ボリューム感に富んだ蟹の彫刻的な美しさを、明暗対比の技法を駆使して描き出している。その結果、蟹の甲殻が放つ光沢や、脚の躍動的な動きが強調され、あたかも生きているかのように見える。

デューラーは、このように何気ないスケッチをする際にも、形態の美しさが最大限表現できるように、色彩の配置に意を用いていた。

(羊皮紙に水彩とグアッシュ、26.3×35.5cm、ロッテルダム、ボイヒマンス・ファン・ボイニンゲン美術館)





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