壺齋散人の 美術批評
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第五、第六の封印:デューラー「ヨハネの黙示録」




四つの封印が解かれて黙示録の四騎士が呼び出された後、子羊は続けて第五、第六の封印を解く。その結果現れたのは、最後の審判の舞台となる場面であった。その場面を、ヨハネの黙示録は次のように書いている。

「小羊が第五の封印を開いたとき、神の言葉と自分たちがたてた証しのために殺された人々の魂を、わたしは祭壇の下に見た。彼らは大声でこう叫んだ。<真実で聖なる主よ、いつまで裁きを行わず、地に住む者にわたしたちの血の復讐をなさらないのですか。>すると、その一人一人に、白い衣が与えられ、また、自分たちと同じように殺されようとしている兄弟であり、仲間の僕である者たちの数が満ちるまで、なお、しばらく静かに待つようにと告げられた。

「また、見ていると、小羊が第六の封印を開いた。そのとき、大地震が起きて、太陽は毛の粗い布地のように暗くなり、月は全体が血のようになって、天の星は地上に落ちた。まるで、いちじくの青い実が、大風に揺さぶられて振り落とされるようだった。天は巻物が巻き取られるように消え去り、山も島も、みなその場所から移された。地上の王、高官、千人隊長、富める者、力ある者、また、奴隷も自由な身分の者もことごとく、洞穴や山の岩間に隠れ、山と岩に向かって、<わたしたちの上に覆いかぶさって、玉座に座っておられる方の顔と小羊の怒りから、わたしたちをかくまってくれ>と言った。神と小羊の怒りの大いなる日が来たからである。だれがそれに耐えられるであろうか」(日本聖書協会訳)

封印が解かれるにしたがって二つの場面が現れるわけだが、この二つの場面を、デューラーは一つの画面の中に描いている。上半分が第五の封印が解かれた場面、下半分が第六の封印が解かれた場面である。

画面の上部には、キリストを中心にして、天使と殺された人々の霊魂が描かれている。霊魂はここでは人の姿をしている。

画面の下部はさらに二つに区切られ、その上部(画面の中程)では、太陽と月が擬人化されて描かれ、夥しい数の星が落下するさまが描かれている。そして最下部では、最後の審判を待つ人々が描かれている。彼らは皆恐怖に慄いているかに思わせている。自分の犯した罪の深さと、それに対する裁きの厳しさに、恐れおののいているのだ。

(1497-1498年、木版画、39×28cm、カールスルーエ国立美術館)





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