壺齋散人の 美術批評
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書物を食べるヨハネ:デューラー「ヨハネの黙示録」




七つの封印が解かれた後、七人の天使たちが次々とラッパを吹いた。ラッパが吹かれるたびに、この世には禍々しい事がおこった。そして第六のラッパと第七のラッパの間に、一人の天使が地上に下りてきて、ヨハネに書物を差し出した。そしてヨハネは命じられるままにその書物を食べるのだった。この部分のテクストは次のとおりである。

「わたしはまた、もう一人の力強い天使が、雲を身にまとい、天から降って来るのを見た。頭には虹をいただき、顔は太陽のようで、足は火の柱のようであり、手には開いた小さな巻物を持っていた。そして、右足で海を、左足で地を踏まえて、獅子がほえるような大声で叫んだ。天使が叫んだとき、七つの雷がそれぞれの声で語った。

「七つの雷が語ったとき、わたしは書き留めようとした。すると、天から声があって、<七つの雷が語ったことは秘めておけ。それを書き留めてはいけない>と言うのが聞こえた・・・

「すると、天から聞こえたあの声が、再びわたしに語りかけて、こう言った。<さあ行って、海と地の上に立っている天使の手にある、開かれた巻物を受け取れ。>そこで、天使のところへ行き、<その小さな巻物をください>と言った。すると、天使はわたしに言った。<受け取って、食べてしまえ。それは、あなたの腹には苦いが、口には蜜のように甘い。>

「わたしは、その小さな巻物を天使の手から受け取って、食べてしまった。それは、口には蜜のように甘かったが、食べると、わたしの腹は苦くなった。すると、わたしにこう語りかける声が聞こえた。<あなたは、多くの民族、国民、言葉の違う民、また、王たちについて、再び預言しなければならない。>」(以上日本聖書協会訳)

テクストにあるとおり、場面は天使が降りてくるところと、ヨハネが書物を食べるところとの、ふたつから成り立っているが、デューラーはここでも、それらを一つの画面のなかに描いている。

地上に降り立った天使は、「頭には虹をいただき、顔は太陽のようで、足は火の柱のようで」あり、その右足で海を、左足で陸地を踏みしめている。天使の右腕は神の坐す天上の方向を差し、左手には書物を持っている。そして画面右下に膝まづいているヨハネが、その書物の一端を両手でつかんで、まさに食べようとしているのである。

ここでヨハネが書物を食べるという行為は、これから予言すべき事柄がその書物に書かれているということを暗示している。ヨハネは書物を食べることによって、予言すべき事柄を自分の内面に取り込むのだ。

(1497-1498年、木版画、39×28cm、カールスルーエ国立美術館)





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