壺齋散人の 美術批評 |
HOME|ブログ本館|東京を描く|水彩画|ブレイク詩集|フランス文学|西洋哲学 | 万葉集|プロフィール|BBS |
大天使ミカエルと竜の戦い:デューラー「ヨハネの黙示録」 |
ヨハネの黙示録第12章は、「女と竜」と題して、太陽を身にまとった一人の女が出産し、生まれてきた子供を龍が食べようとする話である。その話の途中に、大天使ミカエルとその天使たちが、竜とその眷属を相手に戦う場面がある。テクストは次のとおりである。 「さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが、勝てなかった。そして、もはや天には彼らの居場所がなくなった。この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、投げ落とされた。地上に投げ落とされたのである。その使いたちも、もろともに投げ落とされた」(日本聖書協会訳) この竜は、このテクストの直前の部分で、火のように赤い竜で、七つの頭と10本の角があり、頭には七つの冠を被っていると書かれているが、デューラーはこの絵の中では、竜をもっと単純化して描いている。そのかわりに、大天使ミカエルのほうを、目立つように描いたわけである。 テクストでは、ミカエルと竜との戦いぶりは、詳しくは描かれていないが、デューラーはケルン聖書の挿絵などをもとに、その戦闘場面を再現している。ミカエルは長い槍を持ち、その刃の先で竜の首を突き刺している。また天使の一人は、別の竜の頭に向けて矢を放とうとしている。 下の方には田園風景が描かれていくが、そこは竜たちが傷ついて落ちていくところである。地上に落された竜たちはなお性懲りもなく、女の後を空しくおうこととなるだろう。 (1497-1498年、木版画、39×28cm、カールスルーエ国立美術館) |
|
HOME|デューラー|次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2013 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |