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尾長猿のいる聖母子:デューラーの銅版画




ヨハネの黙示録の木版画シリーズを完成させたのち、デューラーがあらたに取り組んだものの一つに、聖母子の連作がある。聖母子は中世以来、絵画の大きなテーマとなってきたが、デューラーの時代になると、これまでとは異なったイメージで、民衆に迎えられるようになった。それまでの神秘性を帯びた聖母子のイメージから、民衆にとって近づきやすい聖母子のイメージへの転化、すなわち聖母子のイメージの世俗化が起こった。デューラーはその世俗的な聖母子のイメージを、一連のシリーズとして描き、1510年に、書物(聖母伝木版画)として出版したが、そのほとんど(17点)は、第二次イタリア旅行(1505-07)以前に完成した。

この銅版画「尾長猿のいる聖母子」は、聖母伝の連作に先駆け、1498年に作られた。これと似ている作品「バッタのいる聖家族」と比較すると、構図に進化がみられる。三角画法は意図的に取られているのである。このため、「聖家族」の中にいたヨセフが省略され、その代わりに尾長猿がマリアの足元に拝された。こうすることによって、マリアの頭上を頂点とした、綺麗な二等辺三角形が現れる。

「聖家族」にも背景として風景が描かれていたが、ここでもやはり描かれている。その風景は、デューラーの身近にあった沼を写したもので、彼はあらかじめスケッチしておいたその絵をここに取り入れたのである。

また、聖母子のポーズにはフィレンツェ派の影響が見られると指摘されている。猿にどんな意味が込められているのかは、わからない。

(1498年、銅版画、19×12.1cm)





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