壺齋散人の 美術批評
HOME ブログ本館 | 東京を描く 水彩画 日本の美術 プロフィール 掲示板


コロー「ナルニの橋」:バルビゾン派の画家たち




コローはバルビゾン派の創始者というわけではないが、バルビゾン派の特徴であるフランス風の風景画をもっとも早く表現し、バルビゾン派の画家たちを物質的にも精神的にも援助した。そういう意味でコローは、バルビゾン派を代表する画家といってよい。その活動は、1820年代後半から1870年代前半までの長期にわたり、一貫してバルビゾン派の指導者であり続けた。

コローは裕福な家庭に生まれたので、余裕のある暮らしができた。両親はかれが画家になることに反対だったが、息子の熱心に負けて許した。そこでコローは気兼ねなく絵の修行ができた。最初に師事したのはミシャロンとかベルタンといった古典的な風景画家である。やがてかれは、オランダやイギリスの風景画を参考にしながら、自分独自の境地を開拓していく。その彼の画風が、バルビゾン派の画家たちに影響を及ぼし、大きな潮流になっていくわけだ。

コローは、若い頃はパリ近郊や英仏海峡の風景を描いていた。1925年にイタリアに赴いて、イタリア風の明るい画面を吸収した。そのイタリア滞在中に描いた作品を1827年のサロンに送り、そこで初入選したことで画家としてのデビューを果たした。

「ナルニの橋(Le Pont de Narni)」がその出展作の一つである。上に掲げたのは、習作である。ナルニの橋は、古代ローマの遺構で、いまでも残っている。この絵は、その橋を上から俯瞰した構図で、明るい画面が特徴である。(1926年 カンバスに油彩 34.0×48.0cm パリ、ルーヴル美術館)



これは、サロンに出展した完成形の作品。習作に比べると、画面構成が平面的になっており、色彩も重い感じに仕上がっている。(1927年 カンバスに油彩 68.0×94.6cm オタワ、カナダ国立美術館)




HOME バルビゾン派次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである