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コロー「フォンテーヌブローの森」:バルビゾン派の画家たち





コローはサロンで評価されることを重視していて、ほぼ毎年サロンに出展した。だがなかなか高い評価を受けることはなかった。出展作の大部分は風景画であり、なかでもフォンテーヌブローの森を描いたものが多かった。「フォンテーヌブローの森(Forêt de Fontainebleau)」と題したこの作品は、1846年のサロンに出展され、みごと入選した。

コローは、前年の1845年にイタリアへ三度目の旅行をしており、その成果としてのイタリアの風景画を三点、同年のサロンに出展したのだったが、入選したのはこの「フォンテーヌブローの森」だけで、ほかはみな落選した。それに憤慨したテオフィル・ゴーティエが、馬鹿な批評家は無視して、フォンテーヌブローの森を散歩しよう、と皮肉ったほどだ。

もっともこの絵は、フォンテーヌブローの森を散歩したことから生まれたわけではなく、以前に描いたほか場所の風景の習作をもとに、アトリエで再構成したものだそうだ。

明るい画面を基調に、陰影をきかせているところは、風景画にとっての新しい試みと評価された。風景画に陰影のアクセントを持ち込んだところが、新鮮なものと受け取られたのである。

(1846年 カンバスに油彩 90.5×129.5cm ボストン美術館)




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