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コロー「マントの橋」:バルビゾン派の画家たち




これは「マントの橋(Le pont de Mantes)」を描いた作品。セーヌ川にかかるこの石造りの中世風の橋を、コローは大変気にいり、十数点もの作品が残されている。コローは、若い頃イタリアに旅した折、古代の面影を残す風景に心を奪われ、「ナルニの橋」などを描いているが、そうした古代趣味が、マントの風景によってかき立てられたようである。

コローの風景画の持ち味は、煙るような色使いの、茫漠とした印象にあるが、この絵はかなり具象的である。橋の堅固な構造が、フランス人であるコローの、幾何学的精神を刺激した結果だろう。

川を挟んで、手前に樹木を配し、その枝の合間からモチーフの橋を垣間見る構図は、前出の「マントの大聖堂」と同じである。その聖堂の尖塔らしいものが、遠景にちらりと見える。

(1868年頃 カンバスに油彩 38×56cm パリ、ルーヴル美術館)




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