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コロー「読書の中断」:バルビゾン派の画家たち




「読書の中断(Interrupted reading)」は、「真珠の女」とほぼ同じ頃に制作された。コローの肖像画の傑作である。読んでいた本を膝の上に置き、家具に肘をあずけ、その手をこめかみにあてて瞑想に耽る女。その表情からはメランコリックな雰囲気が伝わってくる。

構図は単純で、筆使いもラフである。その一方で、首飾りやイヤリングは微細に描かれ、著しいコントラストを演出している。

腕の表現をはじめ、女性の輪郭線には、デフォルメの意思が感じられる。そういうところは、近代的な構成といえる。セザンヌやマチスの先駆者と言ってよいほどである。なお、女性の着ている衣装はイタリア風で、コローの趣味だそうである。

(1870年頃 カンバスに油彩 92.5×65.1cm シカゴ美術館)




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