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ミレー「グレヴィルの断崖」:バルビゾン派の画家たち




晩年のミレーは、画家として有名になり、絵も売れるようになったので、生活はだいぶ楽になった。画風も、明るい画面が多くなり、印象派を予想するようなものになった。パステルや水彩を用いた絵を多く描き、また屋外で作業を完結させるのではなく、写生のスケッチをもとにアトリエで完成させるようになった。

1970年に普仏戦争が起こると、ミレーは家族を連れて、妻との共同の故郷であるシェルブール地方に疎開した。グレヴィルにあった実家はすでに人手に渡っていたが、ミレーはしばらくの間滞在して、故郷の風景を描いた。

「グレヴィルの断崖(Les falaises de Gréville)」と題したこの絵は、そんな一点である。ノルマンディー半島先端のドーヴァー海峡を見下ろす断崖の上に、釣竿らしいものを手にした男が描かれている。パステルをもちいてフンワリとした雰囲気をかもし出し、しかも非常に明るい画面は、後の印象派の絵を想起させる。

(1871年 紙にパステル 43.7×54.1cm 倉敷、大原美術館)




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