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トロワイヨン「小さな群」:バルビゾン派の画家たち




トロワイヨンの動物画家としての名声は、1860年ごろには海外にも聞こえ、ヨーロッパ中に模倣者が出るほどだった。かれの絵は、非常に人気があったのである。

「小さな群(Le Petit troupeau)と題したこの作品は、そうした名声の絶頂期に描かれたもの。牛や羊からなる家畜の小さな群れを率いた女性をモチーフにしたものだ。トロワイヨンの動物画の特徴は、ボッテルのように動物だけを描くのではなく、風景画として出発した画家らしく、風景を背景にして、人間を入れることで、人間の暮らしの暖かい雰囲気が伝わってくることだ。

この絵の場合には、広大な空の青さと、背景の緑といった寒色を基調にしながら、前景のモチーフに暖色を使うことで、人間や動物たちを強調しているところに特徴が見られる。トロワイヨンの動物画の典型といってよい。

(1860年頃 カンバスに油彩 73×92cm パリ、ルーヴル美術館)




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