壺齋散人の 美術批評
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クールベ「浴女たち」:バルビゾン派の画家たち




「浴女たち(Les Baigneuses)」と題するこの絵をクールベは1853年のサロンに出展したが、すさまじい反響を巻き起こした。それは否定的な反響であって、スキャンダルと言ってもよかった。裸婦の描き方が、あまりにもあけすけで、下品だと攻撃されたのである。なかには、こんなものをサロンに出させるべきではないという意見もあったが、この頃のクールベは無審査でサロンに出展する資格を持っており、誰もそれをとめることが出来なかったのである。

従来、裸婦がモチーフとして受け入れられるためには、ルネサンス以来の決まりごとのようなものがあった。聖書のアダムとイブ神話とか、あるいはギリシャ神話に取材したものとか、一定の物語性が込められていることが条件だったのだ。ところが、この絵には、そうした一切の背景はない。ただ、女の裸体がむき出しに描かれているだけだ。そこに当時の人々は、現代人がポルノに抱くのと同じような違和感を抱いたのだろうと思う。

裸婦の描き方もかなりぞんざいである。優美さのかけらもない。むしろ醜悪なほどである。肥満して醜い肉をさらけだした女の裸体には、目を背けさせるようなものがある。それが偽善的な人々の嘲笑を招いた。

この絵は、マネの傑作「草上の昼食」にインスピレーションを与えたと言われる。

(1853年 カンバスに油彩 227×193cm モンペリエ、ファーブル美術館)




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