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クールベ「こんにちは、クールベさん」:バルビゾン派の画家たち




クールベは、1855年のパリ万博に合わせて、会場近くで個展を開いた。「こんにちは、クールベさん」と呼ばれるこの作品は、「画家のアトリエ」などとともにこの個展で展示した作品。その際には単に「出会い」と題していたが、会場のものすごい反響を受けて、「こんにちは、クールベさん(La rencontre, ou "Bonjour Monsieur Courbet")と呼ばれるようになった。

この絵の中には、クールベ自身の自画像が描かれているのだが、それが見るものに非常に尊大な印象を与えた。まるでふんぞり返っているように見えるし、そのかれに挨拶している人物が卑屈に見えたので、そうした雰囲気がこの絵に、クールベを揶揄するような題名をもたらすことになったのである。

クールベに挨拶しているのは、画商のブリュイアス、その隣にいるのは彼の使用人である。実は、この絵は、ブリュイアスの依頼によって制作されたのだった。ブリュイアスとしては、自分を中心して描いてもらいたかったはずだが、自己愛の強いクールベは、自分のほうを前面に押し出したというわけであった。

背景になった場所はモンペリエの郊外。この絵はいまでもモンペリエに飾られている。モンペリエはポール・ヴァレリーが大学に通った町だ。

(1854年 カンバスに油彩 129×149cm モンペリエ、ファーブル美術館)




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