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クールベ「りんごとざくろ」:バルビゾン派の画家たち




クールベは反権力的な傾向が強くて、若い頃から政治的なメッセージを発することが多かった。その傾向が高じて、1871年にはパリ・コミューンに深くかかわった。これは独仏戦争にフランスが敗れたことで、ルイ・ボナパルトの第二帝政が崩壊し、その権力のスキをついて、労働者が一時的に新しい権力を掌握しようとした運動だった。それにクールベは、労働者の立場に立って参加したわけだった。

パリ・コミューンは短期間のうちに粉砕され、クールベはその首謀者の一人として逮捕された。具体的な罪名は、ヴァンドーム広場のナポレオン記念円柱破壊というものだった。その咎でかれは半年間、サント・ペラジー監獄に収監された。

収監中、クールベには一定の自由が認められたので、かれはその自由を静物画の製作にあてた。かくしてクールベの晩年を飾る多くの静物画が生まれた。

「りんごとざくろ(Nature morte avec pommes et grenades)」と題したこの作品は、かれの静物画の代表作である。これ以前には、静物画はまともな絵画作品とは見なされていなかった。クールベの一連の静物画は、静物画を絵画の重要な一ジャンルに押し上げた功績がある。

(1871年 カンバスに油彩 44×61cm ロンドン、ナショナル・ギャラリー)




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