壺齋散人の 美術批評
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荒野におけるバプテスマのヨハネ




バプテスマのヨハネはキリストの前駆者ともよばれ、キリスト教の聖人たちの中でも特別の尊崇を受けている。その生涯は波乱に富み、最後にはサロメの願いにもとづいて、ヘロデ王に首を切られたのだった。オスカー・ワイルドはその物語を「サロメ」のなかで、迫真の力を込めて描き上げた。

「マタイ伝」によれば、「このヨハネはラクダの毛の外套を着、腰のまわりに腰衣をつけ、蝗と野蜜がその食べ物であった」(岩波文庫版福音書)となっているが、ボスはこの絵の中のヨハネに赤い法衣を着せている。

ヨハネは石に寄りかかった姿勢で、左手で頭を支え、右手で何者かを指さしているが、その指の先には子羊が身を横たえている。子羊は神が最も愛する動物なのである。

ヨハネの足元から生えている木は、熟した実をつけていることから、誘惑のシンボルと考えられる。木の先端には、ヨハネの常食である蝗が二匹括りつけられてぶら下がっている。

背景には沼地が広がり、そこから奇怪な構造物が聳えている。「悦楽の園」と構図が似ているところから、それは「愛の館」だと考えることもできよう。つまり誘惑のシンボルなのだ。

こうしてみると、この絵のテーマも、誘惑と戦い神に向かう聖人の内面を描き出したのだと、解釈することができる。

(パネルに油彩、48.5×40cm、マドリード、ラザロ・ガルディアノ美術館)





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