壺齋散人の 美術批評
HOMEブログ本館東京を描く水彩画ブレイク詩集フランス文学西洋哲学 | 万葉集プロフィールBBS


キリストを担う聖クリストフォロス:ボスの世界




クリストフォロスとは、ギリシャ語で「キリストを担う者」という意味である。そんなことから、聖クリストフォロスの像には、このように、キリストを背負ったイメージが結びついた。実際のクリストフォロスは3世紀頃の人であり、キリストの同時代人ではなかった。

この絵の中で、聖クリストフォロスは赤い法衣を背中でからげ揚げ、その上に少年を背負いながら、川を渡っている。川岸には人間と犬が描かれているが、それらと比べて、クリストフォロスは余りにも巨大だ。

伝説によれば、巨人のクリストフォロスは、最初は異教徒であったが、わが師と頼むものを求めて放浪の旅に出、王や悪魔に仕えたりしたが、最後にキリストに出会って、改心したということになっている。

この絵の中で、川をわたるクリストフォロスの顔は、いかにも苦しそうに見える。それは背負っている少年が余りにも重いからだ。というのも、少年に姿を変えたキリストは、世の中のすべての罪を自分で背負っているので、その重さは尋常なものではなかったのである。

それでもクリストフォロスが重さに堪えることができたのは、キリストへの信仰のためだったのだ。この絵を通じて、ボスはそう言いたかったのかもしれない。

(パネルに油彩、113×71.5cm、ロッテルダム、ボイヒマン美術館)





HOMEボスの世界次へ







作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2012
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである