壺齋散人の 美術批評
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女占い師:カラヴァッジオの世界





「女占い師」は、ローマの粋な若者がロマの女占い師に手相を見て貰っているところを描く。女は手相を見ると見せかけて、若者の手を握り、指輪を抜き取ろうとしているようにも見える。そんなところから、この絵は、「いかさま師たち」と似たような題材であり、描かれたのも同時期ではないかとの推測もなされたが、デル・モンテ邸に移ってからの作品だという解釈が有力である。

若者は、カラヴァッジオの弟分マリオ・ミンニーティ。女のほうは、カラヴァッジオがローマの街角で見かけたロマの女を拾ってきたのだという。当時は、すぐれた彫刻をモデルにして人物像を描くことが流行だったが、カラヴァッジオは、生きた人間をかならずモデルに使った。

背景に自然の光を入れて、広々とした空間感覚を持たせている。こうした光線の使い方は、以後カラヴァッジオの多くの作品で試されるようになり、カラヴァッジオのトレード・マークのような意味合いを持たされる。この絵の場合には、光線は左手上部からさしこんでいる。そのため、光線のやってくる方向を向いた若者の顔は明るく描かれ、光線に背を向けたかたちの女の顔には影がさしている。

同じような構図の絵が、別にもう一点ある。そちらは違うモデルを使っており、また完成度もこれほど高くはない。

(1596年頃 カンバスに油彩 99×131㎝ パリ、ルーヴル美術館)




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