壺齋散人の 美術批評 |
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エジプトに逃れる聖家族の休息:カラヴァッジオの世界 |
聖家族のエジプト逃避は、ジョット以来多くの画家が取り組んで来たテーマだ。ロバに乗った聖母子と、ヨハネの組合せというのが多いが、ほかに何人かの人間を配する構図もある。また、聖家族が休息しているところを描いたものもある。カラヴァッジオは、休息する聖家族の前に、天使があらわれて、かれらを慰藉するために楽器を弾いているところを描いた。こういう構図は珍しい。おそらくカラヴァッジオの独創ではないか。 天使はバイオリンのような楽器を弾き、ヨハネが譜面を前に差し出している。天使の傍らには、キリストを抱いたマリアが、疲れ切った表情で休んでいる。このマリアのモデルは、アンナ・ビアンキーニという名の娼婦だという。当時カラヴァッジオが付き合っていたチンピラ仲間の一員だったようだ。カラヴァッジオは、そうした悪党仲間を絵のモデルに使うことが多かった。どういうつもりかは、わからない。 天使の描き方が、マニエリスムを想起させるような緻密な描き方だ。羽の描き方にも念が入っている。この天使のモデルが誰かは、明らかではない。おそらくカラヴァッジオが日頃付き合っていた仲間の一員なのだろう。カラヴァッジオは、人間の肌の影の部分に、セルリアン・ブルーを効果的に使うのだが、この絵の天使にも、それがうまく使われている。 これは天使の上半身の部分を拡大したもの。ヨハネが差し出した譜面は、きわめて精巧に再現されている。天使のかなでる音楽が、人のこころを慰藉していることは、疲れ切ったマリアの胸で眠るイエスの表情とか、天使のほうに面を突き出している驢馬の表情からもうかがわれる。 (1597年頃 カンバスに油彩 135.5×136.5㎝ ローマ、ドリア・パンフィーリ美術館) |
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