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アレクサンドリアの聖カタリナ:カラヴァッジオの世界




アレクサンドリアの聖カタリナは、四世紀初頭に殉教した聖女。殉教して天国に召されたカタリナは、聖母マリアに気に入られ、イエスと婚約させられたという伝説があるくらい、聖女の中の聖女とされる。彼女が殉教した原因は、時のローマ皇帝マクセンティウスの誘惑をはねのけたからとされる。それ以前に彼女は、皇后をキリスト教徒に改宗させていた。

皇帝の怒りをかった彼女は、拷問にかけられたが、どんな拷問具も役立たなかったので、斬首されたという。拷問具のなかで最も有名なのは車輪で、彼女は車輪に括り付けられて転がされたのであったが、車輪はバラバラに壊れて役に立たなかったと言われる。聖カタリナをモチーフにした絵には、必ずといってよいほど、車輪が描き添えられる。

カラヴァッジオの作品「アレクサンドリアの聖カタリナ」にも、車輪が描き添えられている。そのほか、剣とか鞭も描かれているが、これらも拷問道具である。

カラヴァッジオはこの絵を、デル・モンテ枢機卿のために描いた。モデルは、「マグダラのマリア」同様、フィリーデ・メランドローニである。明暗対比が一層強く表現され、奥行きの深い作品になっている。

(1598年頃 カンバスに油彩 173×133㎝ マドリード、ティッセン・ボルネミッサ美術館)




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