壺齋散人の 美術批評
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エマオの晩餐:カラヴァッジオの世界




1601年の夏に、カラヴァッジオはデル・モンテ枢機卿の邸宅からジローラモ・マッティ枢機卿の邸宅へ移った。ジローラモはほかの兄弟ともどもカラヴァッジオの熱心なファンで、かれらの為にカラヴァッジオは世俗的な作品を描いてやった。上の写真は「エマオの晩餐」といって、マッティ枢機卿のために描いたものである。

エマオの晩餐とは、死から復活したキリストが二人の弟子たちと共に、エマオという町の宿屋でとった食事のこと。キリストの死後、クレオパともう一人の弟子が道を歩いていると、そこにキリストがあらわれた、二人はこの人がキリストとは知らないまま、自分らの宿に案内して食事をサービスしたところ、キリストの食事の仕草から、かれがキリストであることに気が付く。しかしその時にはキリストの姿はもう見えなかったという。

この絵は、食事を共にしている男がキリストであると知って、驚愕する弟子たちを描いている。中央にいるのがキリスト、その左右に腰かけているのが二人の弟子。一人は両手を広げて十字架のイメージをあらわし、もうひとりは驚きのあまり椅子から立ち上がろうとしている。キリストの脇に立っているのは宿屋の亭主で、キリストの顔を不思議そうに眺めている。

キリストのモデルは、カラヴァッジオの唯一の弟子で、おそらく同性愛の相手でもあったフランチェスコ・ブオネーリだと思われる。ブオネーリはほかにもカラヴァッジオ作品のモデルになっている。



これは両手を広げて驚愕を表現する弟子の表情。明暗の激しいコントラストが印象的である。

(1601年 カンバスに油彩 141×196.2㎝ ロンドン、ナショナル・ギャラリー)




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