壺齋散人の 美術批評
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洗礼者聖ヨハネ:カラヴァッジオの世界




カラヴァッジオは、聖ヨハネのモチーフが好きだったようで、折に触れていくつかの作品を描いているが、上のものはマッティ枢機卿の求めに応じて描いたらしい。枢機卿の甥にジョヴァンニ・バッティスタという少年がいたが、その名はイタリア語で「聖ヨハネ」を意味する。そこでその少年のために「聖ヨハネ」をモチーフにした絵を贈ったというふうに考えられてきたわけである。

だがこの絵の中の「聖ヨハネ」は、十字架をつけた杖など聖ヨハネのしるしとなるものではなく、羊と一緒に描かれている。羊に深い縁があるのはイサクであるから、この絵は聖ヨハネではなくイサクを描いたのだと言う見方もある。真相はわからない。カラヴァッジオが描いたほかの「聖ヨハネ」は杖を持った姿で描かれている。また、杖を持ったヨハネの脇に羊を配したものもある。

モデルは「勝ち誇るキューピッド」と同じくフランチェスコ・ブオネーリ。こちらは、勝ち誇るキューピッドよりも年長のイメージで描かれているが、それでも多少の幼さを感じさせる。なお、このポーズは、ミケランジェロの天井画のなかのイニューディ(青年裸体像)を下敷きにしているといわれる(「エリトリアの巫女」の上部)。ミケランジェロの青年像も、下腹部は無毛である。

(1601年頃 カンバスに油彩 129×94㎝ ローマ、カピトリーニ美術館)




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