壺齋散人の 美術批評
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聖マタイと天使:カラヴァッジオの世界




コンタレッリ礼拝堂では、聖マタイをモチーフにしたカラヴァッジオの二作品が非常に気に入ったので、祭壇画を追加で注文してきた。「聖マタイと天使」である。早速制作にとりかかり、一年近くかけて描きあげた。ところが祭壇に取り付けると、見栄えが悪すぎると言って受け取りを拒否された。そこでカラヴァッジオは代替策の制作を、契約期間内に終えた。

第一作目が不評をかったのは、聖マタイの風貌が野卑すぎるという理由からだった。なるほど、聖マタイは農夫のような武骨で野卑な姿で描かれており、またそのマタイに天使がなれなれしく寄り添っている。そこが卑猥さを感じさせなくもない。なお、この第一作は、ジュスティニアーニに引き取られたが、その後失われた。いまは白黒写真が残っているだけである。

第二バージョン(上の写真)では、マタイは尊厳を感じさせるように描かれており、また天使はマタイの上に浮かんでいて、躰を接触させていない。つまり第一バージョンで指摘された点を、改めたわけである。

天使は、両手の指でなんらかの徴を作っているが、それが何をあらわしているのか、よくわからない。数字のⅠをあらわし、マタイ伝が福音書の最初に位置することを意味しているとか、性的な仕草をほのめかしているとか、色々な見方がある。

(1602年 カンバスに油彩 295×195㎝ ローマ、サン・ルイジ・デイ・フランチェージ聖堂)




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