壺齋散人の美術批評 |
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頭蓋骨のピラミッド セザンヌの静物画 |
晩年のセザンヌは頭蓋骨に関心を示し、頭蓋骨をモチーフにした多くの絵を描いた。かれの頭蓋骨への関心は、一つには死への向かい方に根差し、もう一つは静物画家としての資格において、頭蓋骨に果物やキューピッド像のような形態的な美を発見したからではないか。 セザンヌを支え続けてきた母親が1897年に死んだことで、セザンヌは自分自身の死も予感したらしい。セザンヌはほぼ世間とのかかわりから離れ、隠棲に近い生活をしていたので、余計に死を考えるようになった。とはいえ、死の予感がただちに頭蓋骨への関心に結びつくわけではない。頭蓋骨が静物画のモチーフになるには、画家がそれに独特の美を認めるプロセスが必要である。セザンヌはおそらくそうした美を頭蓋骨に見出し、それを静物画のモチーフにとりいれたのではないか。 四つの頭蓋骨がピラミッド状に重なっている。どの頭蓋骨も下あごを欠き、大きな眼窩が印象的である。背景はあいまいにぼかされているので、四つの頭蓋骨は支点を失い空中に浮いているように見える・ (1901年 カンバスに油彩 37×45.5㎝ 個人像) |
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