壺齋散人の 美術批評
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マルスの練兵場:シャガールの恋人たち




シャガールが1954年から翌年にかけて描いたこの絵には「マルスの練兵場」という題名がつけられている。「マルスの練兵場」というのは、昔ローマにあった練兵場だと思われる。そうだとしたら、この絵とどのような関係があるのか、よくわからない。この絵の中には、練兵場を思わせるような光景は描かれてはおらず、恐らくはヴィテブスクと思しい街並と、パリの街景が描かれているからだ。

絵の中の男女は、シャガールと彼の新しい妻ヴァヴァであろう。1952年に結婚した後、シャガールはベラにかわってヴァヴァを、絵の中の自分のパートナーとして描き続けるようになっていった。

この絵にも、ヴィテブスクの街並とパリの街景とが混在して出てくる。シャガールはこの後も、この二つの街の組み合わせを何度も描いている。

ベラと一緒にいる時と違って、抱き合っているわけでもないし、顔を見つめ合っているわけでもない。しかし、横を向いたシャガールの目線はヴァヴァの方に向いている。そこには、成熟した男女の愛が読み取れるのではないか。

全体の色の基調がブルーなのは、幸福な男女にはミスマッチにも思われるが、この時期のシャガールはさまざまな色彩実験をしており、これもその一環だと思えば、理解できないことではない。

(1953年、キャンバスに油彩、149.5×105cm、エッセン、フォルクヴァンク美術館)





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