壺齋散人の美術批評
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過去・現在・未来:ドーミエの風刺版画




「過去・現在・未来(Le passé. Le présent. L'avenir)」と題されたこの石版画は、ルイ・フィリップの顔を皮肉っぽく描いたものだ。ルイ・フィリップの顔は、下膨れなところが洋梨を想起させたので、人々はかれを「洋梨」とあだ名した。この絵を見ると、たしかにルイ・フィリップは洋梨が人間の真似をしているように見える。

三面相のところが、興福寺の阿修羅像を想起させる。まさかドーミエが興福寺の阿修羅像を知っていたとは思えないが、それにしても着眼点がよく似ている。正面は仏頂面で、左側は得意顔、右側はびっくり顔に見える。どれがルイ・フィリップの真相なのか、見る者の想像を駆り立てる。

ドーミエは、ルイ・フィリップの権力掌握に寄与した仲間たちの肖像画も描いた。それらを見ると、かれらの性格が一目で分かるように感じられる。ドーミエはするどい観察眼を持っていたようである。

(1834年1月 カリカチュール 石版画 21.4×19.6㎝)



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