壺齋散人の美術批評
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聖書商人:ドーミエの風刺版画




「聖書商人ロベール・マケール(Robert-Macaire Md de bibles)」と題されたこの石版画は、新聞王ジラルダンを風刺した作品。ジラルダンはラ・プレスほか有力な新聞を発行し、それに広告の機能を持たせることで、巨万の富を得た。そのやり方は、誇大広告で人々の購買意欲をあおるというもので、それに対してシャリヴァリによるフィリポンとドーミエは強く反発した。

中国風の屏風を背に、左右に女をはべらしているのがロベール・マケール扮するジラルダン。そのジラルダンに向かってなにやら話しかけているのは、相棒のベルトランである。ベルトランは、聖書の予約購読者から苦情を言われていると報告している。それに対してマケールは、それはお前の格好が派手すぎるからだと説教する。

かれらがお前を玄関から追い払おうとするなら、窓から忍び込めといって、あくどい金儲けにこだわるジラルダンを風刺しているわけである。その風刺に聖書を使ったことが洒落だ。

(1838年9月 リトグラフ 25.0×32.4㎝ シャリヴァリ)



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