壺齋散人の美術批評
HOME ブログ本館 | 東京を描く 水彩画 日本の美術 プロフィール 掲示板


慈善家ロベール・マケール:ドーミエの風刺版画




この作品も「ロベール・マケール」シリーズの一つ。ここではロベール・マケールは慈善家に扮している。慈善家というのは皮肉で、健康増進剤として浣腸を売りつけ、大儲けしていた商人をモチーフにしたもの。その商人は、自分のやっていることはただの商売ではなく、慈善行為だと開き直っていた。

大きな壁に書かれた文句に、大勢の人々が見入っている。文句は「浣腸の会社、年に12フランで、健康な方にも病気の方にも、あらゆる方にお届けします」と読める。当時は、こんな文句もたやすく信じられていたのである。

左手前に、大男ロベール・マケールと相棒のベルトランが描かれている。ロベールのモデルとなったのは、大衆演劇で悪徳商人を演じたフレデリック・ルメートルだという。この演劇は政府によって上映禁止となった。それではもったいないというので、ドーミエは芝居を見た記憶だけでも呼び覚ましてほしいと、この石版画を描いたのである。

(1836年8月、リトグラフ 27.5×22.7㎝)



HOME ドーミエ次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである