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セーヌはコート・ドール県に源を発し:ドーミエの風俗版画




ドーミエは政治的な風刺版画のほかに、同時代のパリの風俗をテーマにした版画も多く作った。とくに、「カリカチュール」が発行できなくなってからは、そうした風俗版画を多作したが、それらにもやはり、政治的な視線を感じさせるものがある。

「セーヌはコート・ドール県に源を発し(La Seine est une rivière qui prend sa source dans le Département de la Côte d'Or)」云々という説明書きのついたこの版画は、「水浴する人々(Les Bagneurs)」シリーズの一つ。

この絵の中の人々は、セーヌ河畔に設けられた公衆浴場で水浴している。この頃のパリは、水道や下水道などのインフラが整備されておらず、水は不足がちで、庶民が家に風呂を設けるなど高値の花だった。かれらは、毎日顔を洗わないでも平気だった。それでも、夏には、公衆浴場へ出かけて行って、水浴びをしてさっぱりしたいと思った。

せまくるしい空間の中で、ひしめきあって水浴びをしている人々が描かれている。中には犬を洗ってやったり、高い場所から放尿しているらしい男も見える。

(1839年6月 リトグラフ 26.1×33.9㎝ シャリヴァリ) 



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