壺齋散人の美術批評
HOME ブログ本館 | 東京を描く 水彩画 日本の美術 プロフィール 掲示板


時計の安全鎖売り:ドーミエの風俗版画




「時計の安全鎖売り(Vendeurs de chaîne de sécurité de montre)」と題するこの石版画は、「パリのボヘミアン」シリーズのひとつ。ブルジョワ紳士に時計の安全鎖を売りつけるスリたちを描いている。「ロベール・マケール」シリーズではないが、スリの中には、マケールとベルトランを思わせる人物像が登場している。

少年を含めたこのスリの三人組は巧妙な役割分担をしており、ベルトランが安全鎖を売りつけている隙間に、マケールが紳士の懐中から時計をするというわけである。

当時、ブルジョワの金持は、高価な懐中時計を見せびらかすことで、自分のステータスを誇示していた。その懐中時計のための安全鎖を売ると見せかけて、当の懐中時計をすろうというのであるから、かなり皮肉な道具立てというべきだろう。

(1840年9月 リトグラフ 24.2×19.0㎝)



HOME ドーミエ次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである