壺齋散人の美術批評
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よきブルジョワ:ドーミエの風俗版画




ルイ・フィリップの時代はブルジョワの時代といわれた。ルイ・フィリップを権力の座に押し出した七月革命は、プロレタリアートが主導したものだが、その果実はブルジョワジーが手にした。かれらはルイ・フィリップをお飾りにして、国の権力の実質的な享有者となった。そんなブルジョワの生態に、ドーミエは厳しい目を向けた。

「よきブルジョワ(Les bons bourgeois)」と題する石版画シリーズは、ブルジョワの生態を皮肉に描いたもの。このブルジョワ紳士は、国民軍の中隊長に抜擢されたのを喜び、中隊長の制服を新調して、妻と子供に披露している。得意げな父親の顔を、息子は厳粛さを装って見上げ、妻はさも感心したように見つめている。

この制服は、軍の支給品ではなく、個人の負担になるものである。中隊長に限らず、国民軍の兵士は、自前で制服を用意する義務があった。金がなければ、兵士にもなれないというわけでる。

(1846年4月 リトグラフ 24.1×19.4㎝ シャリヴァリ)



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