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テュイルリー宮の腕白小僧:ドーミエの風刺版画




二月革命が勃発すると、難を恐れた国王ルイ・フィリップはイギリスへの亡命をはかり、テュイルリー宮を脱出した。その王のいなくなった宮殿に、群衆が殺到した。その様子を描いたのが、「テュイルリー宮の腕白小僧(Le Gamin de Paris aux Tuileries)」と題されたこの石版画である。

一人の腕白小僧らしい少年が、ルイ・フィリップの王座を占拠し、そのまわりを大勢の人々が取り囲んでいる。腕白小僧は、クッションのきいた椅子に深々と腰をうずめ、「うへ、ふっかふかだよ」と叫んでいる。左手前には、サーベルをささげた少女が、共和国への忠誠を誓っている。

少年のイメージは、ドラクロアの「自由の女神」の中の、ピストルを振りかざして突進する少年を想起させるものだ。ドーミアは、この光景を目撃したわけではないのだが、その噂を聞いて、ドラクロアの絵を参考にしながら、この作品を制作したようだ。

(1848年3月 リトグラフ 25.5×22.7㎝ シャリヴァリ)



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