壺齋散人の美術批評
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改革宴会派:ドーミエの風刺版画




二月革命によってルイ・フィリップの王政は崩壊したが、新しい共和制はまだ明確な姿を結んでいなかった。一応、21歳以上の男子による普通選挙が4月に行われ、制憲議会のもとで新憲法が制定される。それによって第二共和政といわれるものが生まれる。これは、穏健なブルジョワ支配体制をねらったもので、労働者を中心とした左翼から強い批判を浴びた。その批判は武力蜂起に発展した。いわゆる六月蜂起である。

六月蜂起については、ヴィクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」が詳しく描いている。三日間にわたる労働者と学生による蜂起が、政府軍によって殲滅されるというものだ。この事件について、ドーミエは直接取り上げたことはない。間接的に言及しているだけである。「改革宴会派」と題するシリーズがそれだ。

「改革宴会派」というのは、二月革命以前からある改良運動で、主として地方のブルジョワ層の利害を代表していた。かれらは、二月革命では反王政派の立場にたったが、革命の尖鋭化をおそれた。それで、六月蜂起のような騒ぎには拒否感を示した。ドーミエはそんなかれらに批判的なまなざしをむけた。

上の絵は、シリーズの第四作。シリーズの主役を務めるリフォラールが、六月暴動を生き延びたことを感謝する様子を描いている。

(1848年 リトグラフ 24.3×20.4㎝)



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