壺齋散人の美術批評
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釘打ち銃発明者の夢:ドーミエの風刺版画




国際問題に興味を見出したドーミエは、やがて戦争の惨禍に注目するようになる。ヨーロッパ諸国間の戦争が、武器の近代化によって悲惨なものとなったことがその背景にある。近代化によって高性能になった武器は、人間を大量殺害することを可能にした。そうした傾向にドーミエは危機感を覚えたのだと思う。

「釘打ち銃発明者の夢(Le Rêve de l'inventeur du fusil a aiguilles)」と題するこの石版画は、大量殺害兵器によって、一度の大勢の人間が殺害されるさまを描いている。ここで使われている兵器は、釘打ち銃といって、弾丸から無数の金属片が飛び散り、それが大勢の人間を一時に殺した。

その釘打ち銃の発明者と思われる男が、自分の発明した武器の威力をたしかめている構図だ。男の眼前に無数の死体が転がって入り、男は自分の発明に自信を得たようである。その表情は悪魔そのものである。

(1866年11月 石版画 33.9×27.8㎝ シャリヴァリ)



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