壺齋散人の美術批評 |
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オペラ座のオーケストラ:ドガの集団肖像画 |
ドガが舞台とか踊り子をモチーフにするのは1870年前後のことである。「オーケストラ・ボックスの楽師たち(L'Orchestre de l'Opéra)」と題するこの作品は、その最初のものである。ただし、この絵は「舞台の踊り子」には焦点をあてていない。踊り子は添え物あつかいで、主役はオーケストラ・ボックスの楽師たちである。 ドガは当時、ペレティエ座のオペラ楽団と懇意にしていて、そのメンバーであるデジレ・ディオーの依頼を受けて、楽団員の集団肖像画としてこれを描いた。画面中央に、楽器を演奏する団員たちをひしめきあうような姿で描き、背後には舞台で踊る踊り子たちを配し、前景には観客席との仕切り板を置くことによって、楽師たちのいる空間を浮かび上がらせるように工夫している。 前列の中央部分でバスーンを吹いているのがデジレ・ディオー、その隣のチェロ奏者はピレである。そのほかの人物はよくわかっていない。ドガは実写にもとづいて描いたのではなく、記憶に基いて描いたとされ、中には楽団とは全く関係のない友人の顔まで動員しているという。 背景の踊り子たちは、添え物扱いで、頭の部分はカットされている。ただ、舞台にみなぎる明るさが、楽団員たちのいる暗い空間との間に強いコントラストを醸しだしている。 (1869年頃 カンバスに油彩 56.5×46.0㎝ パリ、オルセー美術館) |
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