壺齋散人の美術批評 |
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オーケストラの楽師たち:ドガの集団肖像画 |
「オーケストラの楽師たち(Musiciens à l'orchestre)」と題するこの絵も、「オペラ座のオーケストラ」同様、知り合いのオーケストラ楽団の集団肖像画。「オペラ座」を完成させた後制作にとりかかり、三年後に完成させた。おそらくこれは、楽団の依頼によってではなく、自分の趣味から描いたので、時間に拘らなかったのだと思う。 前作と比較すると、楽団員の数は三人に絞られ、しかも後ろ向きに描かれている。肖像画というよりは、風物画といってよさそうである。そのかわりに、踊り子の比重が各段に増した。ドガははじめ、踊り子を、前作同様上半身だけ描いたのだが、気が変わってカンバスの上部をつけたし、そこに頭部も描きいれることにした。その結果この絵は、前景の楽師たちよりも後景の踊り子たちに視線が集まるように出来ている。 その視線は、踊り子を囲む強い光線によって導かれる。その光線のおかげで、画面は上下に二分割され、上部のほうにスポットライトがあたるようになっている。おそらくドガは、オペラ座の舞台を取材するうちに、踊り子への関心を高めたのであろう。 踊り子たちはいづれも動きに満ちている。とくにプリマ・バレリーナは、両脚を揃えて腰を落とし、両手を観客のほうに向けて、媚を売っているような雰囲気である。踊り子の豊かな表情と比べると、楽師たちは無表情に近い。というか、後を見せているので、表情が読み取れないのだ。 (1872年 カンバスに油彩 69×49㎝ フランクフルト、シュテーデル美術研究所) |
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