壺齋散人の美術批評
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オペラ座の稽古場:ドガの踊り子群像




ドガは舞台の上から踊り子を見るだけでは満足できず、楽屋や稽古場に立ち入って、そこで身近に踊り子たちを眺め、その生き生きとした表情を描きたいと思うようになる。「オペラ座の稽古場(Foyer de la danse a l'Opéra de la Rue le Peletier)」と題したこの絵は、そうした意図を込めた作品である。ドガは、知人のつてを使って、ル・ペルティエ街のオペラ座に立ち入る許可を得て、そこで踊り子たちをつぶさに観察することができた。

踊り子たちが稽古をつけられている様子を描く。左手の踊り子が脚を前後にしてステップを踏み、その視線の先にはバレー監督が杖を持ちながらなにやら支持している。監督の周囲には、楽師やら他の踊り子が囲むようにしている。これを中心軸にして、背景には複数の踊り子が描かれ、さらにその奥の空間にも踊り子を配することで、深い空間感覚を表現している。その空間の深さは、手前に置かれた椅子によって、更に奥行きを深めるといった具合だ。

ドガは、踊り子たちの表情をスナップショット的にとらえるとともに、巧みな画面配置を通じて、奥深い空間感覚を表現している。

(1872年 カンバスに油彩 32×46㎝ パリ、オルセー美術館)



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